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お寺の朝は早い。
予定では六時に起床となっていたが、実際はそれよりも三十分早く起きる。
何故なら、お寺では「朝の御勤め」があるからだ。
「朝だぞー、起きろー」
雅彦さんが小さな木魚を叩きながら起こしにくる。この木魚が、実は結構五月蠅い。
しかも雅彦さんは叩くのが雑だ。
いや、雑というかあれは……。
「……雅彦さん、殴ってない?」
「殴ってるね。特に委員長」
「痛いッ痛いですー」
委員長が殴られる音を聞きながら布団を畳む。
畳み終えたら座布団を敷いて十五分間の座禅に入る。
せっかくの体験だからという事で、全員肩を叩かれることになったが、叩くのはもちろん雅彦さんだ。
「大丈ー夫、ちゃんと加減して叩くから」
そう言いながら全力でスイングする雅彦さん。絶対スイングは間違ってると思う。
「よっしゃ、始めるぞー」
雅彦さんが開始の鐘を鳴らせば、静かな時間が流れる。
聞こえるのは小鳥の声と雅彦さんが歩く音のみ。
しばらくすると、雅彦さんが順に叩きだしたのが分かった。
本当に加減はしているらしい。
ただ、委員長は全力で殴ったのか、短い悲鳴が聞こえたが。
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