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トンッと、肩を叩かれ、俺は合掌をして首を横に傾ける。
雅彦さんは狙いを定めて一度だけ肩を打つ。
ピリッとした痛みのあと、もう一度合掌をする。
一連の動作が終わると、雅彦さんは隣へ進みだした。
十五分は結構長く、終わりの鐘が鳴ると、皆は一気にざわめきだした。
けれど、話している時間は無い。
俺と委員長は朝食の準備に、他は寺の掃除をするために動き出した。
◇ ◇ ◇
「仲直りできたみたいですね」
台所の流しで、委員長が話しかけてきた。
今は二人で、味噌汁の具にする野菜を洗っているところだ。
周りに人はいない。
「あ、うん。なんとか」
俺が答えると、嬉しそうに笑った。
「それは良かったです」
と、言ってから「何かあったら、何でも言って下さい」と優しい言葉も掛けてくれた。
「ありがとう。……一つ聞いてもいい?」
「はい!なんでしょう?」
「委員長、合宿に来てから凄く嬉しそうだよね。どうして?」
ずっと気になっていた事だ。
昨日から委員長はどこか嬉しそうで、どうしてなのか知りたかった。
委員長は二回ほど瞬きをしてから、逆に質問をしてきた。
「……嬉しそうでしたか?」
どうやら無自覚だったようだ。
俺が頷くと、しばらく理由を考えて、小さく答えた。
「多分、皆がいるからですよ」
「え?」
「僕の家、ボロボロで、お寺でしょう?こんな山奥ですし、同い年くらいの友達と遊ぶことが無かったんです。遊んでくれるのは兄さんだけで……。
だから、こんなに沢山の人が、家に来てくれたことが嬉しいんです」
委員長は本当に嬉しそうに笑っていた。
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