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「凪、大丈夫か?」
「うっ……あれ、水越……?」
手探りで凪の背中を見つけ、軽く揺すったら凪が起きた。
状況を理解していない凪に早口で説明する。
「俺とお前、二人で落ちたんだよ。どっか怪我してねえか?」
「え、うん。多分大丈夫」
俺が手を差し出すと、少し躊躇ってから手を取った。
「さて、どっか登れるとこ探さないと。凪はここで待ってるか?」
「携帯は?」
「ムリ。圏外」
時間的に最終組が一本松に着くはずだ。勘のいい雅彦さんなら、とっく気づいてるかもしれない。
俺が上を見上げて考えていると、凪が声をかけてきた。
「……登るって、どれくらい落ちたっけ」
「知らねえけど、少しは上に行かねえと。委員長たちも探してるぞ、多分」
俺の答えに凪は少し考えてから、納得したように頷く。
俺たちは登る場所を探すために歩き始めた。
歩いても歩いても崖の険しさは変わらない。そもそも暗くて、崖の上まで見えないってのが本音だ。
しばらく歩いたところで、凪の歩くスピードが落ちていることに気づいた。
凪の方を見れば、どこか歩きづらそうにしていた。
「凪、お前どっか怪我してないか?」
俺が凪を引っ張ると、バランスを崩した凪が倒れこんだ。
一瞬だけ凪の顔が苦しそうな表情になる。俺がその変化を見逃すはずがなかった。
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