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夏といっても、今日は熱帯夜では無いため、冷え込んできた。
流石に薄着のままだと風邪をひく。
遠くの方で委員長達が探してる声が聞こえるが、ここまではまだ遠い。
「……登る」
「え?」
凪が驚きの声を上げる。
俺がいきなり声を出したからだと思うが、そんなこと気にせずに、崖を見つめた。
凪が動けない今、俺が呼びに行かないといけない。
それに凪の足は早く冷やさないと酷い事になる。
「俺が委員長を呼びに行くから、凪はここで待ってろ」
そう言って登ろうと、崖に足をかけた時、凪が俺の服の端を掴んだ。
「……凪?」
「……嫌。ここにいて」
凪の声が震えている。
いや、声だけじゃなく、身体も震えているのが伝わってきた。
いきなりの凪の変化に、俺は戸惑いながらも凪と目線を合わせた。
「どうした?足痛むのか?」
聞いても首を横に振るだけ。
よく見ると、凪の顔は不安な顔をしていた。
「……嫌、置いてかないで。一人に……しないで」
小声で呟く凪。
その様子に俺は気づいた。
凪は昔のことがあってから、一人になるのを嫌う。
一人になるとトラウマが蘇るのだ。
「……凪、大丈夫だ。どこにも行かないから」
こんな状態の凪を一人に出来ず、俺は凪をぎゅっと抱きしめた。
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