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嵐が俺と目線を合わせるようにしゃがむ。俺は何か言葉を話そうとするが、どうしても震えの方が勝ってしまう。
そんな俺の様子を見てか、嵐は俺の両頬にそっと手を添え、ピタリと額を合わせた。
「あら、し……?」
視界いっぱいに嵐の顔。
優しく微笑むその顔に、俺はいつも安心できた。
「大丈夫、俺がいるから。凪を一人になんかさせないよ。ずっとそばにいるから……ね?」
嵐の言葉は安心できる。
いつも俺の目を、真っすぐ見て言ってくれるから。
いつの間にか震えは止まり、あれほど怖かった恐怖は、どこかに消えてしまった。
「凪、もう大丈夫でしょ?」
「うん……」
嵐は確認すると、俺の両頬から手を離した。
その手を下へ移動させ、俺の手を握った。
「嵐の手……冷たくて気持ちいい」
「そう?俺は凪のあったかい手が好きだな」
嵐はそう言うが、俺は嵐の体温が一番安心できる。
俺が嵐に身を預けると、嵐は少し驚いたようだ。
「どうしたの?」
「……少しだけこうさせて」
ただ聞いていたかった。嵐の心臓の音を。
俺は心のどこかで不安だったのかもしれない。
嵐が消えないという保証が欲しかった。
俺の気持ちを理解してか、嵐は何も言わなかった。
昨日より穏やかな嵐の鼓動。生きてるという、俺のそばにいるという証。
その証に安心してか、俺はいつの間にか眠ってしまった。
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