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「と、とりあえず、上がる?」
比泉に圧倒されつつ凪が言うと、比泉は喜んで入っていった。
「……大変だな、みっちゃん」
「同情すんなよ。……悲しくなるから」
そう言って入っていくみっちゃんの背中には、哀愁が漂っていたように見えた。
さっき買ってきた物を凪に渡し、俺たちは風通しの良い凪の部屋に通された。
「今麦茶持ってくるね」
「気をつけろよー」
「お構いなくー」
俺たちの言葉にふわっとした笑みを返して、台所に向かう凪。やっぱりどこか庇うような、変な歩き方だった。
「……あの歩き方。変な癖がつかないといいけど」
みっちゃんは鳴海総合病院の院長の息子だ。素人目にも変だと思ったが、医者志望のみっちゃんはいち早く気づいていたようだ。
「みっちゃんねー、わざわざ家に帰って包帯と薬持ってきてあげたんだよー」
比泉がニコニコ笑いながらばらす。みっちゃんは恥ずかしくなったのか顔を赤くして黙り込んだ。
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