帰国

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 全力疾走虚しく、校舎を通り教室へたどり着いた時には、黒い笑みを貼りつけたちかちゃんが仁王立ちしていた。  罰として一時間目からずっと椅子の上で正座していたので、俺たちは足が痺れて痛くなってしまった。 「……大丈夫か?」 「な、なんとか」  授業が終わったのが午後の一時半。半日ちょっとで学校が終わったので、皆でコーヒーを飲みにコーヒーショップに来ていた。ちなみに、皆とは朝のメンバー+委員長の事だ。 「あー……凪ちゃんの料理食べたいなー」 「え?」 「唐突だな、お前」  いきなりそんなことを言うのは、このメンバーでは比泉しかいない。ツッコミは鳴海の仕事だ。 「だって、この頃まともなもの食べてないしー、昼飯パン一個でお腹減ったしー」 「それはお前の自業自得だろ」  確かにその通りなのだが、このままでは比泉が黙ってくれない。ここはこっちが折れるしかなかった。 「……じゃあ皆食べにおいでよ。何食べたい?」  俺が聞くと、元気よく答えた。 「俺、麻婆豆腐!!」 「……ニラ玉」  まさかここで、水越からもリクエストがあると思わなかったが。  朝確認した冷蔵庫の中身を思い出してみる。  卵は、確か賞味期限がギリギリのやつがあったけど、あれはお昼のおかずに使ったし。  ニラは……一昨日使い切ったし。  豆腐は木綿があったはずだけど、比泉は絹ごししか食べられないし……。 「よし、買いに行こう」  皆には悪いが、荷物持ちでついて来てもらおう。  そんなことを考えながら、氷が溶けて薄くなったアイスコーヒーを飲み切った。
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