帰国

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 玄関にはきちんと並べられた茶色の革靴。この家に革靴を履く人はいないし、こんな革靴が家にあった記憶はない。  とりあえず、俺と嵐、水越で買い物を台所に置いてくることにし、他の皆が家の中を見て回ることになった。ほんとは俺たちも見回ると言ったのだが、比泉が……。 「凪ちゃんの料理が第一!ストーカーは俺たちに任せて、凪ちゃんたちは最高の夕食よろしく!!」  その時に、比泉の腹が盛大に鳴った。どうやら侵入者より自分の腹の虫の方が優先事項らしい。  意気揚々と侵入者を探しに行ったメンバーを見送り、台所で夕飯の準備を始めた。 「ほんとに大丈夫かな?」 「大丈夫なんじゃね?竹刀持ってたし」 「だったらいいけど……」  なんて思ってたら、奥の方から悲鳴が聞こえてきた。  急いで駆け付けると、奥の和室でタンコブを作ってる男性と、男を睨みつけてる皆。  俺たちに気付いてか、委員長が焦りながらの説明を始めた。 「浅羽く、へ、変、変なひ、人が、ごそごそって」 「委員長、まずは落ち着いて」 「これが落ち着いていられるか!!」 「凪ちゃん逃げて、超逃げて!ここで俺達は儚く散るから」 「いや、だから落ち着けって。つか散ってどうする」 「なんで三人ともそんな落ち着いていられるのさ!」  とうとう比泉に怒られてしまった。なんでって聞かれても、その人……。 「「……おかえり。父さん」」 「イタタ、ただいま。凪、嵐」 「「「え?……ええ!!」」」  今度は別の意味で絶叫が響いた。
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