帰国

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「ほんとスミマセンでした!!」 「すみませんすみませんすみませんすみません」 「マコトニモウシワケアリマセンデシタ……」 「いやいや。痛かったけど、若い人はこうなのかな?」 「ああ、ああ。こんなおっきなタンコブ作っちゃって……」  あの後、鳴海と委員長はすぐさま父さんに謝り、比泉は父さんの顔をじっと見てから、カタコト日本語で謝った。  父さんは嵐に治療してもらいながら三人に向き合った。 「そういえば、母さんは?」  父さんが帰ってきたのなら、当然母さんも帰ってきてるだろうと思っていたが、家のどこにも母さんの姿はなかった。俺の質問に、父さんはにこやかに答えた。 「ああ、実家に帰ったよ」  ああ、また出た。父さんの悪い癖。  比泉たちがすごく悲しそうにこっちを見てる。それに気付かない父さんの姿に、俺は頭が痛くなった。 「違うでしょ。母さんは実家に寄ってから来るんでしょ」 「?だからそう言ってるじゃないか」  いや、絶対嵐の通訳がなかったら通じてないと思うんだけど。三人も嵐の言葉でようやく通じたようだ。  落ち着きを取り戻した三人は、順に自己紹介を始めた。 「剣道部部長、鳴海 三月(ミツキ)です」 「剣道部所属、比泉 アキラでーす」 「浅羽君のクラスの委員長をしています。田淵 君彦です」  皆の紹介に、父さんは笑顔だった。 「はい。じゃあこちらもだね。はじめまして、凪と嵐の父親の、浅羽 風介(カザスケ)と言います。して、本日は暑い中、何用で?」  まさか夕飯を食べに大人数で押し掛けたとは言えないだろう三人。そんなことを気にせずに言えるのは、一人しかいなかった。 「飯食いに来ました」  中学の時から夕飯を食べに来ていた水越以外は。 「夕飯……。今日の献立はなんだい?」 「……麻婆豆腐とニラ玉だけど」 「じゃあそれに、海藻サラダをつけてくれ。私は部屋で整理をしているから、出来たら呼んでくれよ」  そう言って上機嫌で部屋に戻って行った父さん。うちの父さんがマイペースだってことは、初めて会った三人にもよく分かったようで、三人とも何も言わなかった。
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