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夕飯はかなり盛り上がった。
父さんの海外での思い出話が主だったが、その他にも学校でのことや夏合宿での思い出とかを話した。
といっても、話していたのはほとんど嵐や比泉達で、俺はずっと黙っているか軽く笑うかくらいだった。
比泉達が帰ったあと、食器を洗いながら一息ついた。比泉たちに疲れたんじゃなくて、父さんに俺は緊張していた。
どうしても、苦手なのだ。両親がいない期間が長かったせいか、どう接したらいいか分からない。
「はぁ」
「ため息は幸せが逃げるぞ」
「!?」
後ろから父さんの声が聞こえて、飛び上るほどビックリした。危うく、大皿を落としそうになった。
「……大丈夫か?」
「だっ、大丈夫……」
明らかに動揺してて、父さんと目も合わせられない。父さんの事は嫌いではないのに、身体がそう反応してしまう。
「……ごめん」
ついつい、逃げるように台所から自分の部屋に向かった。
父さんの顔を想像すると、罪悪感でいっぱいになる。
悲しませたくないのに、もう大丈夫だって言いたいのに。どうしていつも俺は肝心なところで逃げてしまうんだろう。
そう考えて、ああまた自己嫌悪。そうやって自分がどんどん嫌いになっていく悪循環。
「……ごめん、父さん」
誰も聞こえていないところで、小さく呟く。
いつか、父さんや母さんにちゃんと向き合える日は来るんだろうか?
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