悪夢

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 別に、プレゼントが欲しかったわけではない。皆がやるような豪勢なパーティーをしたかったわけではない。  ただ、両親が「おめでとう」と言って祝ってくれればそれで良かった。それだけで満足だった。  ふと、昔祖母が語ってくれた手作りの昔話を思い出した。 『昔々、欲がなくて優しい男と、欲張りで意地悪な男がいました。 欲張りな男は、あれも欲しい。これも欲しいと、なんでも欲しがりました。 優しい男は自分の物を知らぬ人にあげてしまうほど、欲がありませんでした。 国の人々は、皆優しい男が大好きでした。 逆に、欲張りな男の事は大嫌いでした。 欲張りな男は、それでもいいと思っていました。 ある日、そんな二人を見ていた神様が、二人の元に神の使いを送りました。 神の使いは言いました。 「神様が何でも願いをかなえて下さるそうです。あなたたちは何をお願いしますか?」 神様が二人にテストをしたのです。 優しい男は言いました。 「私は何もいりません。ただ、私以外の皆に神の御加護を授けて下さい」 神様は優しい男の言う通り、皆に神の加護を授けました。 欲張りな男は言いました。 「なら神の力をくれ。ついでにお前の背中に生えてる翼もくれ!」 欲張りな男は、神の使いの翼をもぎ取り、神の使いを殺してしまいました。 神様は大変悲しみました。 神様も欲張りな男が嫌いになりました。 神様は欲張りな男には加護を授けませんでした。 それから数年後。 世界中ではある病が流行りました。しかし、この国では神の加護の力で二人にしかかかりませんでした。 それは優しい男と欲張りな男でした。 優しい男は皆が看病してくれたのですぐによくなりました。 皆から嫌われた欲張りな男は、誰からも心配されることもなく一人寂しく死んでしまいました。 欲張らなきゃよかったと、後悔しながら死んでいきました……』
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