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欲張りな男は、まるで自分のようだと思った。欲を張ったばっかりに、一人ぼっちになってしまったのだから。
父さんと母さんは、自分のことが嫌いになったのかな?
だから、誕生日を忘れちゃったのかな?
……自分は生まれてきて良かったのかな?
そう考えてしまう自分が嫌だ。
両親の事を信じられない自分が嫌だ。
黒くて汚い考えを持つ自分が嫌いだ。
こんな汚れた自分より、父さん達はキレイな子の方がいいはずだ。大丈夫、気持ちを隠すなんて得意じゃないか。
俺はこの時、紙いっぱいに欲を書いて引き出しの奥にしまった。
これで大丈夫なはずだ。欲を奥にしまいこんだ今なら、気持ちに嘘をつける。嘘をついてても分からないはずだ。
そうだ、俺はそうやってきたんだ。
父さん達に嘘をついて、嵐にも嘘をついて、自分にも嘘をついて……。
暗い、怖い、泣きたい、気持ち悪い。
誰か、助けて……。
お願いだから、俺を一人にしないで!
―――――――――
――――――
―――
……ぎ。
な……。
「凪っ!」
「!!」
激しく揺り起されて、俺は夢から解放された。
「大丈夫か?酷くうなされていたようだが……」
「大丈夫、だよ。父さん」
俺を起こしてくれたのは父さんだった。弱弱しく答える俺に、父さんは言った。
「大丈夫なわけないだろう。部屋にいないと思ったらこんなところにいるし、顔も真っ青だ」
しまった。前より嘘がつけなくなってたんだ。これじゃあすぐばれるはずだ。
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