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分からなくなるとどうしても不安になる。不安な時は一人でいたくなかった。
けど、嵐や水越に心配をかけたくなかった。
二人に頼りながらもどこかに残る不安。それが大きくなる時に、今日寝ていたあの部屋に行くことが多くなった。
「……あの部屋さ、嵐の部屋が見えるんだ。嵐はいつも寝る前に本を読むから、その明かりがあの部屋から見えて。それを見るだけで安心できた」
「それで、あの部屋に?」
「うん……」
それを聞いた父さんは、目を伏せた。
「そうさせたのは、やはり私達か」
「でも、父さん達が嫌いなわけじゃないよ」
恨んだことがないように、父さん達を嫌いになったことなんてなかった。
むしろ大好きで、でも父さん達に伝わってるのか、俺には分からなかった。だから苦手だと思ってしまったんだ。
「父さんは、俺の事どう思ってる?」
「もちろん、凪は私の大切な息子だと思ってるよ」
そう言って、優しい笑顔で撫でてくれる父さん。ああ、やっぱり俺は父さんを嫌いになれないや。
「へへ。やっぱり俺、大好きだよ。父さんの事」
最初から、怖がらずに言ってしまえば良かった。言ってしまえばこんなに簡単に父さんと話せたんだ。
その後、父さんと二人で朝になるまで、今までの溝を埋めるように話しこんだ。
どこか硬く、会話が続かないこともあったけど、それでも父さんと話せたことは、二人と向き合う一歩になれたはずだ。
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