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その後、二度の話し合いで決まったのは店のメニューと店員の恰好だった。
店のメニューは、かき氷や冷たい飲み物の他に抹茶を使ったケーキやクッキーを作ることになった。
また、店員は皆浴衣になることが決定していた。浴衣は、俺の家に沢山あるので、それを貸すことになっていたが。
「浅羽君、浴衣の事なんですけど、奈美ちゃんの家からも借りれることになりました」
「奈美ちゃんって?」
「はい。この子が奈美ちゃんです」
そう言って委員長が紹介してくれたのは、うちのクラスの相田 奈美さんだった。
相田さんとはあまり話したことがないが、黒髪で、キリッとした瞳が特徴の、気が強い子だとは聞いていた。
いつも一人でいるようなイメージで、他の女子と一緒にいるところは見たことがないが、決して仲が悪いというわけでは無いらしかった。
「奈美ちゃんの家は呉服屋さんなんです。浴衣とか着物は沢山ありますよ」
「……貸すだけだからね。あと浅羽、浴衣は貸せても着付けが出来いっていうのはやめてよね」
ぶっきらぼうにそれだけ言って立ち去る相田さん。俺はぽかんとしているしかなかった。
「あー、奈美ちゃん。すみません、奈美ちゃんあんな言い方しか出来なくて……」
「いや、別にいいけど。というか委員長は相田さんとどういう関係?」
委員長が下の名前で呼ぶなんて珍しかった。
俺の質問に委員長はみるみるうちに顔を真っ赤にして、聞き取れるか聞き取れないかの小さな声で答えた。
「えっと、奈美ちゃんは僕の幼馴染で……初恋の人なんです」
この答えは予想していなかった為、俺は驚いてしまった。
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