学祭

4/24
前へ
/272ページ
次へ
 いきなりの委員長の暴露に驚いた俺だけど、ここで気づくべきだった。  普通、親しい友人でも簡単に「初恋の人」なんて暴露しないことに。そして、委員長は、実は突拍子もないことを平気でやれる人だということを、俺はすっかり忘れていた。  驚きの告白をしてすぐ、委員長は固まったままの俺を引っ張り、教室から一番遠い音楽室まで走った。  引っ張られながら、訳が分からず頭の上で?を浮かべる俺。  ……え、なんで俺、委員長に連れ攫われてるんだろう?  なんて思っている間、委員長は廊下をきょろきょろと見廻し、人がいないか確認してから戻ってきた。 「浅羽君、折り入ってお願いしたいことがあるんですが」 「な、なに?」  この時の委員長の目が今まで見たことないぐらい本気の目だった。  やばい、嫌な予感しかしない。 「……な、奈美ちゃんの」 「相田さんの?」 「奈美ちゃんの、好きな人が誰か、それとなく本人に聞いてきて下さい!」  ほらね、嫌な予感が当たったよ……。 「ねえ、委員長」 「なんですか」  今の委員長に、なにを言っても無駄だとは思うが、一応聞いておかなきゃいけないと思った。  だって、おかしくないか? 「……なんで俺にそんなこと頼むの?俺、相田さんと話したことないよ?」  クラスは一緒だ。お互いの名前ぐらいは、どちらも知っている。  しかし、俺たちはあまりどころか話したことなんて一度もなかった。ましてや、さっきの俺への冷たい態度。  親しい女子でもないのに、そんな一歩以上踏み込んだこと聞けるわけがないだろ!!  でも、委員長も引き下がらなかった。 「大丈夫です!浅羽君なら奈美ちゃんから聞き出せますって」  その根拠は一体どこから来るんだ。俺はため息を吐きたくなった。
/272ページ

最初のコメントを投稿しよう!

876人が本棚に入れています
本棚に追加