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翌日から本格的な準備期間に入った。
『工皇祭まであと5日』と表示された電光掲示板の前を、学生たちが右へ左へ走って行く。
まあどこでもこんな風景は見えるのだが。
うちのクラスも、忙しさは負けていなかった。
学級委員長兼工皇祭実行委員でもある委員長が、普段出さないような大声で指示を飛ばす。
「委員長!ベニヤどこー?」
「ベニヤ板は体育館脇です!五枚運んで下さい!」
「委員長、机の数は足りる?」
「足りるはずです。キッチンに若干多めに用意して下さい」
「委員長!」
「いいんちょ」
「いーんちょーっ!」
皆に呼ばれてあっちこっち走り回る委員長。元々文系の委員長は、体力が無くなって軽く目を回しかけていた。
「って、他人の心配してる場合じゃなかった!」
実行委員ではないけれど、発案者の俺も何故か忙しかった。
浴衣の準備の他に、メニューの確認と材料費の算出。あと、着付けの指導か。
「凪ー、剣道部の打ち合わせ行くぞー」
ベニヤ板を運び終わった水越が声をかける。
しまった、部の出店のことすっかり忘れてた。
「今行く!じゃ、俺抜けるね」
一応皆に声をかけて教室を出た。
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