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心臓の音がうるさい。
力がうまく入らない。
そのせいか、思わずお盆を落としそうになった。
「どうしたの?入って、来ないの?」
嵐が近づくのが、障子の影で分かる。俺は慌てて口を開いた。
「た、体調が悪いんだよ!ほら……うつすと……いけないし……朝食はここに置いとく……から」
最初は勢いよく、後半からは消えそうな声でそう言うとお盆を置いて立ち去ろうとした。
「待って!」
嵐が叫ぶ。
俺は嵐の声がスイッチのロボットになったように、その声に反応し、立ち止まってしまった。
「……何?」
声が震える。それが自分の声だと言うことが信じられなかった。
「これだけは言わせて……いってらっしゃい」
優しい嵐の声。まるで、何事もなかったように……。
俺はその声にも逃げるように学校に行ったんだ。
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