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そこまで言って言葉を濁す俺に、嵐は小さく笑って呟いた。
「よかった……」
え?よかった……?
俺がキョトンとしていると、嵐が俺の頬に触れた。
ひんやりとした嵐の手。
この冷たさがほてった俺には気持ち良かった。
「……俺ね、凪が無理してるんじゃないかって、心配してたんだ。昨日もすぐに出て行っちゃうし、朝も顔を合わせてくれなかったし。凪は考え過ぎると、すぐに熱が出ちゃうから、心配だったよ。予想通り熱くなってたね……」
嵐に心配されるなんて……。
でも、その通りだから言い返せない。
「だから、凪が考え過ぎて、俺の事を傷つけないようにって無理して好きだって言った時は、素直に諦めようって思ってた……」
そうだったのか。
なんか申し訳ないな……。
「だから、凪の考えを聞けて、本当に良かった」
ニッコリ笑顔で返され、俺もつられて笑った。
「あ、夕食作らなきゃ」
「あ、だったらうどんが食べたいな」
嵐の希望だ。頑張って作るか。
俺は立ち上がりながら、嵐の事を考えていた。
俺の曖昧な言葉に嵐は頷いてくれたけれど、このままでいい筈がない。
「……嵐、ちゃんと答えれるまで……」
「うん。待ってる」
嵐が笑顔で頷く。
俺はその答えに安心して、離れを出た。
俺達の関係は、兄弟以上。
何未満かはまだわからないまま、今はまだ、俺達のこの曖昧な関係を続けようと思った。
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