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教室に入ってから落ち着いて手紙を読み直す。
そこには、少々丸くて、お世辞にも綺麗とは言えない文字でこう書かれていた。
『突然お手紙を差し上げたことを先にお詫びします。
僕は浅羽先輩を見た時から一目惚れをしてしまったようです。
この気持ちを直接お伝えしたいので、放課後に剣道場の裏に来てください。
お待ちしています。』
「……で、行くの?」
振り向けば、いつの間にか手紙を覗き込むようにして読んでいた水越がいた。
どことなく、不機嫌な顔していた。
「まあ、一応。待ってもらってるのに、無視するのも……ねぇ」
「だったらついて行こうか?」
「いや、いいよ。話聞くだけだし」
俺の言葉に水越は納得していないようだった。
一人で大丈夫だと何度言っても、「ついていく」の一点張り。
だんだん俺も疲れてきた。
「だから大丈……」
「ダメ、行く」
ついには最後まで言わせてくれなくなった。
俺はため息をつく。
「……分かった」
とうとう俺の方が根負けした。
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