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そして、放課後。
水越に俺の鞄を頼み、近くの自販機に待たせて、俺は剣道場の裏に来た。
そこには、朝見つけた男子生徒の他に、いくらか身長の低い男子生徒がいた。
「ほ、ホントに来た!」
いや、呼ばれたから来たんだけど……。
「それじゃあ、頑張れよ」
男子生徒二人は、にんまり笑いながら走っていった。
残ったのは俺と小さい男子生徒だけだった。
その男子生徒は、顔を真っ赤にして押し黙ってしまった。
「えっと、君。一年生の淀橋君だよね?」
俺がこう言うと、淀橋君は驚いたようだ。
「え?なんで名前……」
「ああ、手紙に書いてないから、こっちで調べた」
そう言うと、淀橋君は申し訳なさそうな顔になった。
「気づかなくて……すみません。それで、手紙に書いてある通りなんですが……その、返事は……」
「ああ、そのことだけど……」
俺は、別に同性愛に偏見があるわけではない、かといって興味があるわけでもない。
人が誰を好きになっても、それは人の好みだし、文句言える筋合いがこちらにはないのだから。
でも、俺自身が恋愛に興味がないので、このまま付き合ってしまうのは失礼だと思った。
だから、断ろうと思っていたのだ。
「ゴメン。俺、誰とも付き合う気がないんだ」
ここまで言って、俺は思った。
なんで嵐にもこう言えなかったんだろう。
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