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しばらく、水越も俺も黙ったままだった。
水越が笑ったのは最初だけで、それ以降ずっと苦い顔で黙り込んでしまったからだ。
ちかちゃんも、今日の事を報告するからって出ていったっきり戻って来ない。
俺は少し気まずさを感じて、水越を見る。
そこで俺は、水越の頬に小さな傷を見つけた。
「あ、水越怪我してる」
それはほんとに小さな傷で、少しだけ血も出ていた。
俺はちかちゃんが放置していった救急箱から消毒液と絆創膏を取り出し、水越の傷の治療を始めた。
「おい、これくらいなんてことないから……!」
水越が抵抗するが、そんなの無視だ無視。
だって、俺のせいで水越が怪我をしたんだから。
水越は見せないようにしているけれど、俺の身体とは別に、消毒液や湿布の臭いがする。多分、あの時に怪我したんだろう。
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