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小さな傷だから、すぐに治療は終わってしまった。
水越は、照れ臭そうに頬を軽く引っかきながら、小さく呟いた。
「……ありがとう」
「……ううん。俺の方こそ、ありがとう」
……俺には、こんな小さな事しか出来ないけど。
でも、それだけでもいいから、役に立ちたかった。
もう、何も出来ないのは、嫌だから……。
水越は俺の心情をわかってかわからずか、気遣う様に俺の頭を撫でてくれた。
いつもはうっとおしく思えるこの行為も、今は心地好く感じた。
「よく、頑張ったな。やっぱりお前は強いよ」
水越がそう言って笑うけど、俺はそんなに強くないって!
と、言い返そうとした時、視界がぐにゃりと歪んだ。
「え?」
「え、ちょ」
俺は水越の上に倒れた。
「ってて、大丈夫か?」
「お、おう」
今俺は、倒れたところを水越に受け止めてもらっている。
他人が見たら、抱きしめられてる様に見えるかもしれない。
いつもはすぐに離れるところだが、今は力が入らない。
まあ、放課後に保健室に来るやつなんてそうそう……。
「し、失礼します!あの浅羽先輩いますか?!」
「「あ」」
……そんなやつ、居たよ。
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