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これには俺も水越もギョッとしてしまう。
俺は人が泣くのは見慣れていない。しかも男の子が大粒の涙を流す。この図は俺達が虐めてる様に見えない。
「淀橋君?」
「ごめんなさい、すみません、ごめん、なさい。俺が不良に、ぶつからなければ、先輩達が怪我しなくてよかったのに、ごめんなさい、ごめんなさい……」
声をしゃくりあげながら、必死に謝る淀橋君。
別に俺は、勝手に間に入っただけだし、水越もそんなに酷すぎる怪我はしていないのに。
俺は水越に支えてもらって、淀橋君に近づいた。
近づく度に少しビクッとするのに悪いと思いながら、淀橋君の目の前に立った。
「淀橋君」
「っはい……」
涙を溜めて、俺の顔を見てくれた。
俺は安心させる為に笑ってみせる。そして、淀橋君の涙を拭ってあげた。
「俺達は大丈夫だよ。淀橋君が怪我してないなら、それでいいんだから。な?」
水越に同意を求めると静かに笑ってくれた。
淀橋君は交互に俺達の顔を見て、ぐしぐしと袖で涙を拭った。
「……はい、ありがとうございました」
淀橋君はそう言って一礼して帰って行った。
まあ、暗くなったから帰らせたんだけどね。
「俺達も帰るぞ。車呼んだから」
「あ、うん」
歩けないからその方が嬉しい。
外を見たら真っ暗で、淀橋君をもっと早く帰せばよかったと、反省しながら帰り支度を済ませた。
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