傷痕

3/23
前へ
/272ページ
次へ
◇ ◇ ◇  俺があの双子と会ったのは、中学に上がって直ぐのことだった。  入学式で見た時は、ドッペルゲンガーかと思うぐらいそっくりで、外見では見分けはまったくつかなかった程だ。  教室も一緒で、弟の方がクラスの奴らに積極的に話し掛ける。その仕草に人懐っこさを感じた。  本人の話では、身体が弱いと聞いていたが、そんな風に見えなかった俺は、弟の方と普通に接しっていった。  その接し方に気をよくしたのか弟の方とは直ぐに打ち解け、仲良くなれた。  ただし、兄の方だけはどうしても好きになれなかった。いや、好きになろうとしなかった気がする。  弟の方に連れられる様にいつも一緒にいて、二人して笑っている。  けど、その顔……いや全てが嘘っぽくて仕方がなかったんだ。
/272ページ

最初のコメントを投稿しよう!

876人が本棚に入れています
本棚に追加