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昼休みはすぐにきて、俺と兄の方は屋上へとやって来た。
少し湿気の含んだ風が吹いているこの場所で、俺の方が先に口を開いた。
「で、話って何?」
「え、ああ。あんまり話したことないけど、出来れば友達になってほしいなって」
「断る」
兄の方が喋り終わる前に俺が答える。
兄の方は、突然発した俺の答えに、目を丸くして驚いている様だった。
その顔に、一瞬だけこいつの感情が見えた気がした。
「なん、で?」
動揺しているのか、若干声を震わせた。が、それも嘘っぽかった。
「なんで?お前の声が、表情が、仕草が、全てが嘘っぽいからだ。自分の事を見せないお前の事を信用出来る訳がないだろ?友達がほしいなら得意の嘘で作ればいい。とにかく、俺はお断りだ」
言いたい事はこれが全部だ。目の前のこいつは、途中から俯いてしまったが、俺の知ったことか。
さっさと俺は屋上から出た。
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