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その日は午後から雨が降り始め、放課後には土砂降りになっていた。
俺は放課後、ずっと本を読んで過ごしていたから、濡れるという事はなかったが、車を呼ぶしかなさそうだ。
手早く鞄に荷物を詰め、いざ帰路につこうとしたその時、担任に呼び止められてしまった。
「……何ですか先生」
「いや、大した用事じゃないんだが、この封筒を浅羽の弟に届けてくれないか?」
手渡された封筒は、そんなに大きくなかったが、重要な書類であることがよくわかる。
しかし、俺に頼むのはおかしいではないか。
「これ、浅羽の兄貴に渡せばいいじゃないですか」
「そうなんだが、浅羽帰ってしまったようなんだ」
申し訳なさそうに言う担任。確かに兄の机を見ると、鞄も何も無くなっていた。
もう帰ってしまったのか。
「いいですよ」
俺は快く引き受けた。
下駄箱に来た俺は、玄関口に鞄が置いて事に気づく。
近づいて確認するとそれは浅羽・兄の鞄だった。
鞄はあっても本人がいない。
俺はその鞄を持って外へ出た。
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