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どれくらい泣いていただろうか。
もうこいつの声は掠れているのに、涙はまだ止まっていなかった。
「っ、ごめん、水っ越君」
「……なにが?」
いきなり話し掛けられて、少々驚いた俺だったが、返事はした。
顔をあげたこいつの顔は、涙でぐちゃぐちゃになっていて。
「ぷっ、ひっでぇ顔」
ついつい笑ってしまった。
近くに置いてあった真新しいハンカチで涙を拭ってやる。
最初はされるがままだったこいつも、後半はハンカチを借りて自分で拭きはじめた。
「……ありがとう」
どうやら落ち着いたらしい。
掠れ過ぎて聞き取りづらい声ではあるが、一応聞こえることは聞こえる。
さて、本題はここからだ。
一息ついて、俺は話を切り出した。
「……話、聞かせてくれるか?お前のこと、今までどうしていたのか」
俺の言葉を聞いて、こいつは微かに震え始めた。
やはり、すぐに話を聞くことは急ぎ過ぎただろうか。
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