傷痕

17/23
前へ
/272ページ
次へ
「でも、四歳になる前に嵐の体調が悪くなって、父さんの会社も雲行きが怪しくなってきて……。  母さんは身体がそんなに丈夫じゃないのに無理して。  だから、少しでも負担を減らそうと家事を必死に覚えて。  ただ笑っていてほしくて。  心配をかけたくなくて。  邪魔だと思われたくなくて。  要らないなんて言われたくなくて……」  幼いこいつが、幼いなりに考えた結果だったのだろう。  どちらも親に一番迷惑をかける年頃。しかも、片方は病気持ちというオプション付きだ。  どちらが邪魔なのかはすぐにわかる。こいつのように少々特殊な場合は尚更だ。 「……けど、やっぱり少しは、俺の事見てほしかった」  
/272ページ

最初のコメントを投稿しよう!

876人が本棚に入れています
本棚に追加