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そして、話し合いが済んだということは、あいつが帰れるということである。
翌日には、あいつの両親が迎えに来た。
荷物なんて、持ってきていないようなものだから、すぐに準備は終わる。
最後に、あいつが挨拶に来た。
「……ありがとう。水越君」
「別に。俺の方こそ、ごめんな。勝手なこと言って」
俺が謝ると、こいつは首を横に振る。
「水越君がいなかったら、俺ずっと嘘ついてた。……もう嘘はやめる。水越君のおかげだよ」
そう言ってふわりと笑うこいつに、俺は釣られて笑ってしまった。
「じゃあまたね」
振り返り、歩きだすこいつの袖を、俺は掴んだ。
「え……」
「浅羽……じゃなくて、凪!
俺達、友達だからな」
初めてこいつの名前を呼んだ。
そしたら急に恥ずかしくなって、顔がかっと熱くなる。自分で呼んでおいて変だけど。
「……うん。そうだよね!」
嬉しそうに笑うその顔に、俺はしばらく見惚れた。
気づいた時には、俺は凪の袖を離していて、離れたところで凪は手を振っていた。
慌てて手を振り返し、凪が見えなくなるまでそこにいた。
夏休みが終われば、また凪に会える。
俺は少しだけ、新学期に入るのが楽しみになった。
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