合宿

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 夏休み前日の今日。  授業は、最後のホームルームを残すのみだった。 「お前ら、夏といえば?」  ちかちゃんが聞く。  クラスの皆は口々に、花火や海や祭などの言葉をあげる。  ちかちゃんは満足そうに頷いていた。 「そうかそうか。遊びの楽しみはあるんだな? ……けど、お前らにそんな楽しみ無いから」  ニッコリ笑うちかちゃんの顔は、笑っているはずなのに、すごく怖かった。 「田淵、例のあれ!」 「あ、はい」  そう言って立ち上がるのは、短髪に眼鏡のうちのクラス委員長である田淵 君彦。  天然というか、おっとりというか、とにかくマイペースな人なんだ。 「えっと、男子全員参加の合宿です。必ず参加して下さいね」  そう言って渡すのは、何かのプリント。  内容は、二泊三日の合宿についてだった。 「……何これ?」  誰かが呟く。  それをちかちゃんが聞き逃すはずがなかった。 「それが何か説明しようか。それはな!」 「クラスの学力向上の為の合宿です。なんで行うかというと、学年成績が一位と二位の人がいるのに、クラス総合の順位が最下位だからです」 「……と、いうことだ」  見事に委員長に言いたいことを言われて、出番を奪われたちかちゃんである。  ちなみに、学年一位は水越、二位は委員長だ。
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