合宿

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 しばらく俺達がほうけていると、奥の方からこの寺の和尚さんらしき人が出てきた。  いや、和尚と言っていいのだろうか?  袈裟を着てはいるが、和尚にしては若い、若すぎる。  俺達とそれほど変わらぬ年頃だ。  それに、坊主頭ではなく、金髪にピアス。  今時の若者が、寺でバイトをしているという印象が強い。 「あ゛、なんだ?」  ――前言撤回。若者というよりヤのつくあの職業の方です。絶対。 「兄さん、ただいまです」  委員長がにこやかに和尚さんに近づく。  ん?兄さん……?  ってか、ただいま? 「あ、紹介が遅れました。この人は田淵 雅彦、僕の兄です。それからここは、僕の家ですよ」  委員長が説明する。  俺は改めて、雅彦さんの顔をまじまじと見た。  ……この人、そんなに委員長に似てないぞ?  なんて、的外れな事を思っていると、雅彦さんは委員長の頭をむんずと掴んだ。 「おい!その言葉遣いやめろって言ったよな、君彦!」 「痛いっ!兄さん、縮む!」 「むしろ縮め!」  二人のじゃれあいのようなやり取りを見て、俺は正直羨ましかった。  嵐とは喧嘩らしい喧嘩をした事がない。喧嘩をしようとすれば全力で止められるし、あんなじゃれあいは嵐の体調を考えると出来るわけがなかった。  一度でいいから、喧嘩がしたいな……。
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