876人が本棚に入れています
本棚に追加
しばらく俺達がほうけていると、奥の方からこの寺の和尚さんらしき人が出てきた。
いや、和尚と言っていいのだろうか?
袈裟を着てはいるが、和尚にしては若い、若すぎる。
俺達とそれほど変わらぬ年頃だ。
それに、坊主頭ではなく、金髪にピアス。
今時の若者が、寺でバイトをしているという印象が強い。
「あ゛、なんだ?」
――前言撤回。若者というよりヤのつくあの職業の方です。絶対。
「兄さん、ただいまです」
委員長がにこやかに和尚さんに近づく。
ん?兄さん……?
ってか、ただいま?
「あ、紹介が遅れました。この人は田淵 雅彦、僕の兄です。それからここは、僕の家ですよ」
委員長が説明する。
俺は改めて、雅彦さんの顔をまじまじと見た。
……この人、そんなに委員長に似てないぞ?
なんて、的外れな事を思っていると、雅彦さんは委員長の頭をむんずと掴んだ。
「おい!その言葉遣いやめろって言ったよな、君彦!」
「痛いっ!兄さん、縮む!」
「むしろ縮め!」
二人のじゃれあいのようなやり取りを見て、俺は正直羨ましかった。
嵐とは喧嘩らしい喧嘩をした事がない。喧嘩をしようとすれば全力で止められるし、あんなじゃれあいは嵐の体調を考えると出来るわけがなかった。
一度でいいから、喧嘩がしたいな……。
最初のコメントを投稿しよう!