876人が本棚に入れています
本棚に追加
若干涙目の委員長を尻目に、雅彦さんがこちらをジロリと見る。
しばらく皆の顔を眺めていた雅彦さんだが、目線を俺のところでピタリと止めた。
「……おい君彦、今日来るのって男子だけじゃなかったか?」
「そうだよ」
「じゃあなんで、一人だけ女子がいるんだよ!」
「ぷっ」
後ろから嵐の失笑が聞こえた。水越を含む他の皆は苦笑しているはずだ。見なくてもわかる。
いつものことだし……。
「浅羽君は男子です」
委員長が雅彦さんに言ってくれたが、雅彦さんは信じられないようだ。
顔を近づけ、食い入るように見てきた。
その顔の近さといったら、鼻がぶつかりそうになったぐらいだ。
どうせ信じてもらえないだろうな。
声も高いし、こんな顔だし……。
「……そうか、悪かったな」
しかし、俺の予想とは違って、すぐに信じてくれた。
しかも、謝ってくれるというおまけつきで。
今まで初対面の人に、こんな反応をしてくれる人がいなかったので、俺の方が反応に困ってしまった。
けれど、俺は雅彦さんがいい人だということを知ることが出来た。
……参加して、よかったな。
そんな思いを持ちつつ、夏合宿は始まったのだった。
最初のコメントを投稿しよう!