合宿

15/29
前へ
/272ページ
次へ
 俺は、訳がわからない。という顔をしていたに違いない。  その顔を見ていた水越は、笑いながら俺の背中を強めに叩いた。 「っ!何すんだよ」 「凪、変なこと考えてるだろ?少しは自信持てよ。このカレー、皆美味いってさ」  そう言いつつ、美味そうにカレーを食べる水越。  よく周りを見れば、確かに皆、美味そうに食べていた。  自分で作っておいてだが、美味しいのかどうか信じられない俺は、一口だけ食べてみた。  ……確かに、変な味はしないけど、ちょっと甘かった。  多分、隠し味のチョコレートとコーヒーの割合を間違えたからだと思う。  皆は満足そうだけど、俺は納得いかない。  明日はちゃんと味見しよ。 「……ぷっ」  俺の百面相を見ていた嵐が笑う。嵐はしばらく笑ってから、俺にそっと耳打ちしてきた。 「チョコレート、入れすぎたんでしょ?」  やっぱり嵐にはばれてしまった。  俺が小さく、「ごめん」と謝ると、嵐は「気にしないで」と囁く。 「今日のカレー、これはこれで美味しいから」  そう言って、美味そうに食べる嵐の顔を、俺はしばらく眺めていた。  いつも見てる顔のはずなのに、何故か今の嵐の顔は、とても生き生きとしていて、綺麗だと思った。
/272ページ

最初のコメントを投稿しよう!

876人が本棚に入れています
本棚に追加