876人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は、訳がわからない。という顔をしていたに違いない。
その顔を見ていた水越は、笑いながら俺の背中を強めに叩いた。
「っ!何すんだよ」
「凪、変なこと考えてるだろ?少しは自信持てよ。このカレー、皆美味いってさ」
そう言いつつ、美味そうにカレーを食べる水越。
よく周りを見れば、確かに皆、美味そうに食べていた。
自分で作っておいてだが、美味しいのかどうか信じられない俺は、一口だけ食べてみた。
……確かに、変な味はしないけど、ちょっと甘かった。
多分、隠し味のチョコレートとコーヒーの割合を間違えたからだと思う。
皆は満足そうだけど、俺は納得いかない。
明日はちゃんと味見しよ。
「……ぷっ」
俺の百面相を見ていた嵐が笑う。嵐はしばらく笑ってから、俺にそっと耳打ちしてきた。
「チョコレート、入れすぎたんでしょ?」
やっぱり嵐にはばれてしまった。
俺が小さく、「ごめん」と謝ると、嵐は「気にしないで」と囁く。
「今日のカレー、これはこれで美味しいから」
そう言って、美味そうに食べる嵐の顔を、俺はしばらく眺めていた。
いつも見てる顔のはずなのに、何故か今の嵐の顔は、とても生き生きとしていて、綺麗だと思った。
最初のコメントを投稿しよう!