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人のことは言えないけど、高校生の食欲は本当に凄いと思う。
大鍋で作ったはずのカレーはあっという間に空になってしまった。
さて、大変なのはここからで、大量の食器を流しに運ばなくてはならない。
食器を運びつつ机を拭いていると、机の下に小さな瓶が落ちていた。
拾い上げると、中身は嵐の薬だ。
「嵐、また落としたのか」
嵐はよく薬瓶を落とす。
それはもう、わざとじゃないかと思うくらいに。
……後で届けないと。
俺は薬瓶をポケットにしまい、台所へと急いだ。
◇ ◇ ◇
大量の食器を片付けた後、寝る場所である大部屋に向かう。
中を覗くと、皆は委員長の家の風呂に入り終わっていて、寝床を敷いているところだった。
ぐるっと見回してみるが、嵐の姿が見当たらない。
首を傾げる俺のもとへ、委員長が駆け寄ってきた。
「浅羽君、どうしました?」
「あ、いや。嵐知らない?探してるんだけど……」
「お風呂はさっき入ってましたよ。……もしかしたら、伊達丸のところかも」
……だ、伊達丸?
なにそれ、犬?
「伊達丸っていうのは、僕の家にいる猫のことですよ」
「猫……なんだ」
……誰が名付けたんだろう。伊達って、ここ伊達藩じゃないのに。
「はい。多分僕の家の縁側にいると思いますよ」
委員長にそう教えられたので、俺はお礼もそこそこに、縁側に向かった。
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