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「まあね。ここに来てぼーっとしていることもあるわ」
いつもの無表情な顔で、快晴の空を見つめている。
そんな委員長の姿は、なんだかとても絵になりそうな気がする。
ちょっと見たいとも思った。
「さ、早く食べましょ」
委員長はその場に座ると、ビニール袋の中から白いプラスチックの容器を取り出した。
「きらい屋の牛丼弁当?」
それはどう見ても、大手牛丼チェーン店のお持ち帰り品にしか見えなかった。
「うん。今日は時間がなかったから」
朝のきらい屋でブレザー姿の女子高生が牛丼弁当を買う。
それはそれでシュールな気もするけど、好みは人それぞれ、十人十色である。
「そっかあ。じゃ、僕も食べようかな」
突っ込みを入れるのは野暮というもの。
僕は委員長の隣に座り、焼きそばパンの包みを開けた。
「……」
かぶりつこうとした手前、委員長が物言いたげな目でこちらを見ていることに気がついた。
「ん? どうしたの?」
訊いてみると、委員長はため息交じりに牛丼に箸を入れながら一言。
「……突っ込んでほしかったのに」
「…………えっと?」
幻滅というかガッカリというか、感情表現の乏しい顔はそんな表情になっていた。
この人にはまだまだ謎な部分が多い。
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