ほんとのこと

3/10

5908人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
  (本当に、なにも知らない) それなのに、ただ一緒にいる時間が長いということだけで、彼女を知った気になっていた。本当に、馬鹿な男だと思う。 彼女の泣き顔を思い出すと、胸が締め付けられるような感じがした。 校庭の真ん中から校舎を振り返る。 真っ赤な夕日を背に受けた学び舎からは、真っ黒な影が伸びていた。 「教えてくれるわけ、ないよなあ」 校舎はそこに頑としてそびえるだけで、当然答えを教えてくれるはずがない。 だけど、なにかヒントになることだけでもいい。とにかく委員長に会わなければならない。 僕は物言わぬ校舎をすがる思いで見上げ――そして気づいた。 「……まだ、探していない場所があるじゃないか」  
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5908人が本棚に入れています
本棚に追加