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(本当に、なにも知らない)
それなのに、ただ一緒にいる時間が長いということだけで、彼女を知った気になっていた。本当に、馬鹿な男だと思う。
彼女の泣き顔を思い出すと、胸が締め付けられるような感じがした。
校庭の真ん中から校舎を振り返る。
真っ赤な夕日を背に受けた学び舎からは、真っ黒な影が伸びていた。
「教えてくれるわけ、ないよなあ」
校舎はそこに頑としてそびえるだけで、当然答えを教えてくれるはずがない。
だけど、なにかヒントになることだけでもいい。とにかく委員長に会わなければならない。
僕は物言わぬ校舎をすがる思いで見上げ――そして気づいた。
「……まだ、探していない場所があるじゃないか」
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