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だけど、僕が委員長を泣かせてしまったという事実は変わらない。
「委員長、さっきはごめ」
「いいから座ったら?」
委員長は僕の言葉をさえぎると、自分の隣の床をポンポンと叩いた。
「で、でも、僕は謝らないと――」
「また泣いてほしいの?」
そう言われてしまうと、僕はぐうの声も出ない。
「……分かった」
委員長の隣に腰を下ろす。
「そう、それでいいの」
委員長は満足そうに頷くと、それきりなにも言わなくなってしまった。しかし、どこか僕をからかっているような節があるのは気のせいだろうか?
沈黙があたりに流れる。
「あの、さ」
その沈黙を破り、僕は口を開いた。
「その、さっきの話って……」
ひと際強い風が吹いた。
その風は委員長の黒髪をもてあそぶようになびかせると、屋上から走り去っていった。
「少し」
委員長が口を開く。
「少し、昔話をしてもいいかしら?」
その顔は、赤く焦げた空を見つめていた。
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