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「いいえ。ちゃんと勉強してきたんですよ?」
彼女の言葉を聞いて、ニヤニヤしていた先生の顔が凍りついた。
クスクスと笑っていたクラスのみんなが固まった。
それはもう、愉快としか言いようのない光景だった。
「そ、そうですか……」
先生は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。
一体なにが起こったのか。なにか悪いものでも食べたのか。内心ではきっとそう思っているに違いない。
だけど僕は知っている。
今の彼女こそが、青木明日香という女の子の本当の姿なのだ。
「はい」
明日香は僕を見て、にっこりとほほえんだ。
「だってもう、変な子でいる必要はありませんから」
それは、桜の蕾がほのかに開くようなほほえみだった。
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