アンパンと、焼きそばパンと、牛丼

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僕と委員長の接点にこれといって特別なことはない。 彼女の名前は青木明日香。 僕の名前は青山彰(あおやま あきら) 窓際の列の一番前とその後ろ。 名簿順でたまたま前後の関係になっただけなのだ。 思えばクラスで最初に彼女に声を掛けたのは、他ならぬ僕だったのかもしれない。 「今日の1限はなんだっけ?」 僕はそう訊いたはずなのに、 「あなた、納豆にはネギとタマゴ、どっちを入れるのが好き?」 と、彼女はこう返してきた。 なんだこの人はと思った。 「えっと……。僕はトロロを入れるのが好きかな?」 しかしふざけている感じはしなかったので、純粋に自分の好みを答えた。 すると彼女は僕の顔を無表情でじっと見つめてきて、 「なかなかやるじゃない」 と言った。 それ以来、僕は彼女のお気に入りになってしまったらしい。 誰もやりたがらなかったクラス委員長に彼女が立候補した時はさすがに驚いたけど、副委員長に僕を指名してきたのにはもっと驚いた。 でも、委員長のペースについていける人間は、僕の他にはいなかったらしい。なし崩し的に委員長の世話係になり、ついでに日直のペアにも組み込まれてしまった。 こうして僕はクラス副委員長兼委員長との日直のペア兼委員長のお守役となりおおせたのである。
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