アンパンと、焼きそばパンと、牛丼

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  「おばちゃん、アンパンと焼きそばパンひとつ」 とにかく、いま僕が考えるべきは委員長のことではない。現在進行形でうるさく鳴いている腹の虫を黙らせることに集中しなければならない。 「はい。おまちどー」 購買のおばちゃんからパンを受け取って、代金を払ってその場を去る。流れるような一連の動きは、昼休みの喧噪をいち早く抜け出すために身に付けた業である。 「あ、委員長」 階段に差し掛かったところで委員長に出くわした。 「やほー」 相変わらず感情のこもってない声で、ひらひらと手を振っている。 「今からお昼なの?」 委員長は僕の抱えたパンを見ながら言った。 「まあね。委員長は?」 何も言わず、手にぶらさげた白いビニール袋を持ち上げた。 「ここで会ったが100年目。一緒に食べない?」 委員長はコテンと首を傾げた。 「ちょっと言葉の意味が違うと思うんだけど」 まあ、大した意味はないんだろうけどさ。 「でもいいよ。ご一緒しましょう」 そう言うと、委員長は少しだけ笑った……ような気がした。
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