アンパンと、焼きそばパンと、牛丼

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  「じゃあ、とっておきの場所に案内してあげる」 なにやら含みのある言い方である。 もしかして今の表情の動きは、正義のヒーローを罠にはめた魔王様が浮かべるそれと同じようなものだったのだろうか。 「私のあとについてきてね。途中でいなくなっちゃ……やだよ?」 この人が言うと、なんだかおそろしい響きがする台詞である。 委員長は僕の横をスルリとすり抜けると、ゆっくりと階段を上り始めた。 ゆらゆらと揺れる委員長の髪を追いながら、僕もあとに続く。 「……で、どこに連れていく気さ」 僕らの教室のある階を抜けてもなお、委員長は歩みを止めなかった。 一年生の教室は、教室棟の最上階にある。つまりこの上には誰も立ち入ることはないし、そもそも立ち入る必要もない。 昼休みの階段は人通りが多い。自分たちの教室を越えてさらに上を目指す僕たちを見、みんなは一体なにを思ったのだろうか。 「だからとっておきの場所だってば」 委員長の言葉を証明するように、踊り場を曲がると白い鉄製の扉が現れた。
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