始まり。

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「で、あるからして……」 教師の声とカリカリカリと黒板の文字をノートに写す音が響き渡る。 勉強が好きでもないのに一生懸命教師の癖のある字を解読して自分なりにノートにまとめる。 そしてより良い大学に行きより良い会社に就職して目指してもいないサラリーマンになる。 それなりの人と結婚してそこそこ満足いく生活を送って死ぬ。 だいたいみんなこんなものだろう。 いまさら将来芸能人になりたいだとか、お嫁さんになりたいだとか、 今さらそんな非現実的な夢を描いてるやつなんていないだろうし。 医者になりたいだとか、弁護士になりたいだとかいうやつもいない。 まあ、特別進学校ってわけでもないこの高校にいる時点であきらめた方がいいんだけど。 高校生にもなればいろいろと諦めがつく。 幼い頃はパイロットだとか警察官だとかいろいろ夢も見たが、 そんなもの結局は少年時代の夢物語に過ぎない。 進路希望調査の度に将来何になりたいかと聞かれるが、 まだ決めてない、大学に行きながら考えるなど、曖昧な、しかし一般的な答えを出す。 まだ17年しか生きていない俺らにしてみれば、人生はまだまだ長くて、 その長い人生のほんの一部しか知らないのに、 先の人生全てを決定するなんてできっこない。 そう言い訳をして自分の将来から目をそらし続けてきた。
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