始まり。

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チャイムの音に現実に引き戻された。 手元のノートは随分前に時間は止まっていたらしい。 あわてて黒板に視線を写すも、日直の女子が既に黒板消しを片手に持っていて 止めるのもなんだか煩わしいからそのまま持っていたシャーペンを机に転がした。 あとで、智恵にでも見せてもらえばいいか。 「ねえ! 俊!」 少し離れた席から聞こえた俺を呼ぶ声。 俊というのは俺の名だ。 一ノ瀬俊(イチノセ シュン)。それが俺の名前。 「俊は夏休み暇?」 「特に予定はないけど」 姫の声に顔を上げればいつの間にかいつものメンバーがそろっていた。 ……そういえば今日は夏休み前最後の授業の日だったんだ。 「さっき和樹と夏休み皆でどっか行かないかって話してたんだ」 「いいんじゃないか?」 俺の前の席の椅子にすわり姫こと浅井姫香(アサイ ヒメカ)がキラキラした目でこっちを見て、 俺の返答に本当?と嬉しそうな声を上げ皆はどう?とほかの二人にも視線を向けた。 「うん、行く行く!」 「僕も賛成!」 深山智恵(ミヤマ チエ)がうれしそうに頷き、 佐伯稜(サエキ リョウ)もそれに同意した。 「んじゃ、決定な!」 この旅行を提案した関和樹(セキ カズキ)が満足そうに頷いた。
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