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第二話
ちょうど二日後
爺さんが入院している
病院の近くに
用事が出来たので
女房と一緒に
見舞に出掛けた
昔は何度か仕事で
来た事のある病院
その昔
予科練の
海軍病院だった建物を
大学病院が買い取って
建て増しや
建て直しをはかり
今では
すべて新しくなっている
裏のこの辺では
戦時中亡くなった人を
山積みにして
灯油をかけて
焼いたと聞いている
建物の裏手の
駐車場に車を停め
勝手知った
職員用の出入口から入る
う~ん
ちょっと待って
何だか俺の足が重い
ちょっと入る前に
一服付けていくからと
メンソールに
火を着ける
気分が乗らない
一本きっちり
吸い終わり
中に入る
323号室
確かお袋は
そう言ってたよな~
部屋はすぐに見つかる
いまどきは
個人情報がとかで
部屋の外に名前は無い
六人の大部屋の中に
入っていく
いない
いないな~
俺の聞き違いか~?
帰ろうっか~?
いないんだしさ~
俺が女房に言うと
多分俺の顔を見て
悟ったんだろう
珍しく
強い勢いで
何言ってんの~
私が聞いてくるからと
あっという間に
いなくなった
302号室だって
女房が聞いて来てくれる
302号室は
すぐに見つかった
部屋の入口の
引き戸は大きく
開かれたまんま
看護婦さんが
吉岡さん
吉岡さんと
爺さんの名前を
必死に叫んでた
若いドクターは
慌てながら
看護婦さんに
早く田中先生に
連絡してくださいと
怒鳴られている
看護婦さんは
振り返るなり
俺に家族の方ですか?
って
尋ねてくる
つづく
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