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――そうして、あたしの意思に関係なく、祭りの計画が立てられてしまったのだった。
幸いにも、祭りの日はバイトがなかったので良かったものの、父親に知れたらどうなるだろうか?
父親に知れたら――
「ただいま…」
学校から帰り、自宅のドアを開けると暗い玄関に転がる靴が目に止まる。
その他にも、ゴミが入ったコンビニの袋やティッシュのカスなどが散乱していた。
ふぅと溜め息を吐き、それらのゴミを片付けながらリビングに向かう。
すると、やかましいテレビの音と父親の笑い声が部屋中に響き渡り、ぐちゃぐちゃになったリビングの中心に父親の姿を見る。
いつもと同じように、あたしに振り向くこともせずテレビにくぎつけになる父親。
あたしも何も言うこともなくゴミを片付け、自分の部屋に入る。
必要最低限の物しか置かれていない部屋で、あたしは、
「……疲れた」
独り、そんなことを呟いた。
鞄を下ろしてベッドに倒れ込む。
冷たいシーツに顔を埋め、目を閉じると遠くで父親が笑う声が小さくなっていった。
代わりに、頭の奥で別の声が響き出す。
『ごめんね…トイロ…』
『――さようなら』
『さようなら』
「――五月蝿いんだよ…っ」
五月蝿い。
五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い。
何もかもが五月蝿くて、欝陶しい。
もう、何も信じられない。
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