其ノ壱

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  死した俺の向かう先は地獄ではなかった。 三途の川を渡った憶えはない。 六銭を払った憶えもない。 ならば俺は生きているのか? いや、俺は憶えている。 全身が瓦礫に圧し潰される感触を。 尖った木の柱が腹蔵を貫く感覚を。 全身から血潮が零れ落ちる悪寒を。 魂が啜られ、掻き消えていく痛みを。 我が一族を斬った悲しさと、その仇を斬った虚しさを。 だが、俺には体があった。 感覚がある、熱がある、痛みがある。 心臓は力強く鼓動し、胸は一定の拍子で上下している。 生きている。 なら、此処は何処だ? “生きている”ならば幽世(カクリヨ)ではなく現世(ウツシヨ)のはず。 そして俺は、状態の確認を開始した。
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