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こんな生活を続けていて、アタシはよく自殺もせず生きてこられたと思う……。
それはこの近所に住むあの人の存在が大きかったと思う。
それは近所の公園に住み着いているホームレスの老人だった。
通称シゲじいと呼ばれているこのホームレスの老人は、よく近所で泣いているアタシを励まし、元気付けてくれた。
シゲじいは元医者だったと言い、アタシに綺麗なタトゥーの本を見せてくれた。
シゲじいは趣味で刺青も彫っていたというのだった。
シゲじいはアタシを元気付けてくれる代わりに、アタシに一つの約束をさせた。
それは決して〝自ら死を望まない〟こと。
「どんなに苦しくても人生には必ず転機が訪れる。だから決して人生を諦めちゃいけないよ……」
そう言ってシゲじいはアタシに約束させた。
聞けば昔シゲじいも事故で孫を亡くしているのだという……。
アタシはシゲじいとの約束を守り、肥田野家でどんなに虐待を受けても生きることを諦めなかった。
そんなある日、アタシの18の誕生日にシゲじいはアタシにあるプレゼントをしてくれた。
それはアタシの身体にタトゥーを彫ってくれるというものだった。
以前からアタシはシゲじいの持っていたタトゥーの本を見ていて、自分にもタトゥーを彫って欲しいと頼んでいたのだが、シゲじいは承諾してくれなかった。
それでもアタシがしつこくお願いすると、シゲじいは「お前が18の誕生日を無事に迎えることができたら、お前の好きなタトゥーを入れてやろう」と言った。
【続く】
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