第一章 万屋時雨

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「ほんと!? じゃあお願いがあるの、報酬はバイト代入ったら払うから、あたしのお願い聞いて!」  との事だった。なんでも、その女生徒の親友が元気が無いので励ますのを手伝って欲しいという簡単な内容だ。  由貴と桜に訊くと、特に女生徒の悪い噂は聞かないとの事で、そのまま同じ女の子である沙奈と眞子だけに任せる事にした。  はっきり言ってここからこんな面倒くさい事になるとは思ってなかった訳で、話しは再び時間を戻し、校門の前に着いた所まで進める事となる。  校門に着いた俺達を待っていたのは、周りに暗いオーラを撒き散らす眞子だった。校門の柱に寄りかかり、どんよりとした表情でうつむいている。それを見て、ああ、ダメだったんだな……、と考えながら近づいていく。 「よう眞子、元気ねーな」 「……!?」  声をかけた瞬間、眞子の肩がビクンと跳ねる。 「あ……しぐちゃん……」 「どーしたの? なんか落ち込んでるけど」  流石に落ち込みの度合いを無視できなかったのか、桜と由貴も尋ねる。 「あの、その、ごめんなさい……、私、ダメで……」  眞子はうつむきボソボソと話す。眞子の何かを失敗した時の癖である。 「ま、まあまあ、ここじゃなんだし、教室に行こうよ」  このままでは埒があかない。そう判断したのか、ただいたたまれなくなったのか、あるいはその両方かは分からないが、気を利かせた由貴の助け船により、取り敢えず教室に移動することになった。 「何も聞き出せなかった?(俺&由貴&桜)」 「は、はい……」  今は教室。朝のホームルームが始まる前の時間である。教室に着いてすぐ、俺の席である一番後ろの窓側の席を中心に集まって校門での話の続きをしている。ちなみに俺と由貴と桜しか知らないため、ヒナギクには静かにしてもらっている。別に俺達以外には姿も見えないし声も聞こえないようにしているが、ヒナギクの発言に思わず返事をしてしまいそうになる奴がいるので念のためだ。 「昨日の放課後に私と沙奈ちゃんで岡部さんのお家に泊まりに行ったんです」  付け加えると、岡部とは依頼をした女生徒である。 「ああ、確か岡部の提案で落ち込んでる親友を含めての宿泊会を開いたんだよな?」 「……はい」  眞子は力無く答える。 「それで、私と沙奈ちゃんと岡部さん、そのお友達とで集まったまではよかったんですけど……」
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