第一章 万屋時雨

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 眞子の言うことをまとめると、眞子達の事は新しい友達とその妹ということで紹介したらしく、四人で仲良く話すことはできたが明らかに女の子は元気がなく、思いきって、 「なんだか元気がないね」  ということを訊いたらしいが、女の子は決して話してはくれず、ズルズルと時間だけが過ぎていったらしい。 「うーん、まいったね……」  急に由貴が頬に手を添えながら呟く。 「何が?」  桜が由貴の顔を見る。 「ねえ眞子、はっきり言ってボク達が動いた方がいいかい?」  眞子は少し考える仕草をし、 「あの……、その女の子、すごく人見知りで気弱な子なんです。だから理由がわかるまでは男の子は離れておいた方がいいかもしれません……」  眞子は申し訳なさそうに言う。  なるほどねぇ。結局の所、眞子達に任せるしかないわけか……。  ガラガラガラッ  これからの方針について考えていると、突然教室のドアが開け放たれる。 「うぃーっす! おはようみんな、ホームルーム始めるよ」 「来ちゃったね、先生」  桜がポツリと呟く。  妃村鏡。俺達の担任の先生でもあり、万事屋時雨のお得意様でもある。あり得ない理由とあり得ない言動、そしてそれを是が非でも押し通す我が儘という、一つ持っているだけで厄介なものを三つも揃えたとてつもなく厄介な人物である。長い黒髪にどことなく大和撫子を思わせる美しい容姿の持ち主だが、いたずら好きそうな表情がその全てをぶち壊している。 「取り敢えず話しはまた後だ。早く席に戻れ」 「うん、また後でね」  そう言ってみんな席に戻っていく。 「よーし、みんな席に着いたね? それじゃあホームルームを始めるよ」  そう言って先生は教卓の前に立つ。 「はい、起立、礼、着席、お前等、今日は土曜日、授業が午前中しか無いからって気を抜かないよーに。以上」  あまりの速さに生徒がついていけてないのなどなんのその、先生はさっさとホームルームを終わらせてしまう。  そして放課後。授業が昼までということで教室は活気に溢れている。俺達は再び席の周りに集まり話し合っていた。
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