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あ と が き
「まったく、
手間かけさせやがって」
エンジンを切り、滑空モードで市街地上空を旋回するアパルーサ3。白地に赤、緑、青のストライプという、実験機仕様の珍しい機体だ。
キャノピーの外を見遣るパイロット。東洋人の青年男性。端正な顔立ち。僅かに癖のある髪。
視線の先には広大な公園緑地。
花畑の脇、一組のカップルが抱擁する姿を見て、口元に微笑が浮かんだ。
不思議な事に、パイロットの服装は、単なる作業服。フライトグローブを付けず、素手で操縦桿を握っている。とても宇宙船の操縦に向いた格好ではない。
頭には、ヘルメットではなくアポロキャップ。「SCUDELIA APPALOOSA」のロゴが見える。
「こちらアパルーサ3。
目標達成を肉眼で確認。
ミッションコンプリート。
帰投する」
「了解。
こちらでも確認した。
帰投を許可する。
グッドラック」
パイロットは、通信内容を確認すると、操縦桿を乱暴に引き倒した。
ヒラリと機体を翻し、一気にエンジンを吹かすアパルーサ3。
茜色の秋の空。アパルーサ3は上昇旋回すると、目映い夕日の光に紛れて、その姿を消した。
~GOOD LUCK~
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